「人魚の眠る家」読めば読むほどいい作品だと感じてきました。
本日の解説は第5章です。この小説のクライマックスと言っていいでしょう。
人の生死についてとことんまで考えさせられる内容になっています。
あらすじ
植物人間状態となった瑞穂の弟、生人は小学1年生になっていた。
ある日、生人の誕生会を開くため、家族や親戚、生人の友達を招く。
が、しかし、生人は友達を誘っていないことが判明する。
その理由を母、薫子が尋ねると、生人から「もう姉は死んだから」との答えが返ってくる。
それを聞いた薫子は生人に今から友達を呼ぶよう詰め寄る。
それを見た夫和正は薫子に平手打ちする。
衝撃の展開
平手打ちされた薫子は台所から包丁を持ち出し、一方で携帯で警察を呼び寄せる。
警官が駆けつけたところで、薫子が問う。
「娘の心臓を包丁で刺したら、私は殺人罪に問われるんでしょうか」
「殺人罪になるに決まってます」
「この人たちによれば、娘はすでに死んでいるそうです。それを私が認めないだけだそうです。医師によれば多分脳死でしょうと言われています」
そこでタイトルで使用した言葉がでてくるんです。
「すでに死んでいる人間の胸に包丁を刺す、それでもやはり殺人罪なのでしょうか」
そこで言いよどむ警官たちに薫子が
「では専門家に相談してみてください」
「今ここで訊いても無駄です。連中は仮定の話だと相手にしてくれません」
「仮定の話だとだめなんですね?つまり実際に事件が起きればいいわけですね」
と言って、包丁を大きく振りかぶった瞬間・・・・
薫子のキャラクター
あらすじの前にもいろいろとあるんですが、ちょっと長くなるので割愛しました。
でも、その前の展開もいい伏線になっているんですよね。
(前の展開が重要だったりします。)
それからこの小説は「薫子」のキャラクターが実にいいんです。
気が強くて、自分でこうと決めたら、誰の言うことも聞かない。
それでいて、自分の信念にゆらぐ弱さも実はもっている、そんな矛盾した性格です。
しかし、信念が揺らいだからといって、自分の娘の胸をさそうとするとは・・・
この強烈なキャラクターとこの小説の脳死というテーマがよく合っています。
振りかぶった瞬間に起こった出来事については、ぜひこの本を読んでほしいです。
コメントを残す